Weekly北朝鮮『労働新聞』
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日朝交渉再開の条件に「朝鮮学校無償化」要求か――朝鮮総聯70周年に熱烈な書簡(2025年5月25日~5月31日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年6月2日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
拉致問題などを理由とした日本政府独自の経済制裁では、総聯幹部が北朝鮮に渡航した場合の再入国が制限されている[北朝鮮による拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会で横田早紀江さん(左端)の挨拶を聴く石破茂首相(右端)=2025年5月24日、東京都千代田区](C)時事
朝鮮総聯結成70周年を記念する金正恩国務委員長の書簡が公開された。金正恩の総聯、ひいては在日社会に対する思い入れが再確認できる内容となった。朝鮮学校などが「高校無償化」や「幼保無償化」の対象外であることに憂慮を示し、これらが日朝交渉再開の条件となると考えられる。また、在日朝鮮人による日朝往来の活発化も促している。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 5月25日付は、同日、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)が結成70周年を迎えたことに際して、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が総聯幹部と在日同胞に送った長文書簡の全文を2ページにわたって掲載した。

 書簡の核心は、総聯の持続的な発展を促すことにあると言える。在日の第2世代は「数人しか残っていない」、第3世代は「おじいさん、おばあさんになってしまった」が、結成初期の理念と先代の功績を忘れずに継承していくことが訴えられた。金正恩は、北朝鮮国内において母親大会や少年団大会を「党大会に劣らず重視」しているのは、「次世代を真の革命継承者に育て上げて祖国の明るい未来を確実に保証するため」だと述べている。今年1月には平壌(ピョンヤン)を訪問していた在日朝鮮学生少年芸術団と対面しているが、それは、「彼らが総聯の次世代を導いていく真の愛国の継承者になることを望んでいるからであり、総聯の歴史で重要な分岐点となる今年、新しい世代の育成の重要性を今一度強調するため」だとした。

「権益擁護」「新世代育成」「民族性固守」という「三大注力事業」についても言及があった。『労働新聞』で「三大注力事業」の存在が確認されたのは2013年12月18日付であり、特にその翌年まで何度も繰り返されていた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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